「建設業は男性の仕事」というイメージは、もう過去のものになりつつあります。
国土交通省が推進する「建設業における女性活躍推進計画」や、各企業の取り組みにより、
施工管理や設計、営業、技術開発など、あらゆる分野で女性の活躍が広がっています。
背景には、人手不足や働き方改革、ICT・DX導入による業務効率化があり、
現場での負担が軽減されたことも後押しとなっています。
本記事では、建設業で活躍する女性の事例、キャリアパス、
そして必要なスキルを具体的に紹介します。
就職や転職を考えている方はもちろん、企業の採用担当者にとってもヒントになる内容です。
建設業で女性が増えている背景
① 人手不足による採用の多様化
建設業界は慢性的な人手不足に直面しています。
国土交通省の統計によれば、
2025年現在、建設業就業者の約3割が55歳以上で、若手人材の確保が急務です。
そのため、従来は採用の対象外とされがちだった層にも積極的に門戸が開かれ、
女性採用が進んでいます。
② 働き方改革と週休2日制の推進
2024年4月から時間外労働の上限規制が建設業にも適用され、労働時間の見直しが加速。
週休2日制や有給休暇取得率向上の取り組みが進み、以前よりも働きやすい環境が整いつつあります。
この変化が、女性を含む多様な人材の定着に寄与しています。
③ ICT・DX導入による業務効率化
BIM(Building Information Modeling)やドローン測量、
タブレットによる現場管理など、ICT・DX技術が広がり、
現場での肉体的負担や移動負担が軽減されています。
これにより、性別や体力差に左右されない業務環境が実現しやすくなりました。
④ 国の施策「建設業における女性活躍推進計画」
国交省は、2025年までに女性技術者の比率を5%以上にする目標を掲げています。
女性専用トイレや更衣室の整備支援、女性活躍企業表彰など、
制度面での後押しもあり、現場の受け入れ環境は年々改善しています。
女性が活躍する職種例
① 施工管理職
工事現場の進行管理、品質管理、安全管理を行う職種。
以前は男性がほとんどでしたが、近年は女性現場監督も増加しています。
コミュニケーション能力や調整力を活かし、
現場の雰囲気を和らげる存在として評価されることも多いです。
② 設計職
建築設計、構造設計、設備設計など、オフィスワーク中心の専門職。
CADやBIMなどデジタルツールの普及により、
リモートワークやフレックスタイム制度を活用できる企業も増え、
子育てとの両立がしやすい環境が整っています。
③ 営業・企画職
官公庁や企業への営業、入札対応、企画提案などを担当。
顧客対応や調整業務が中心のため、現場経験がある女性が営業に転じて活躍するケースも多く見られます。
④ 技術開発職
BIMやドローン、AI、IoTなどを活用した新技術の開発・導入を担う職種。
最新技術の習得やデータ分析スキルを活かして、現場の生産性向上に貢献します。
現場経験をベースに社内のDX推進部門に移るキャリアも人気です。
事例紹介
事例①:大手ゼネコンで活躍する女性現場監督
入社5年目のAさんは、大学で建築を学んだ後、大手ゼネコンに入社。
入社当初は体力面や人間関係への不安があったものの、
先輩社員のサポートやICTツールの活用により、
現在は延べ100人規模の現場を取りまとめる施工管理職として活躍しています。
Aさんは「女性だからできないことはない。むしろ現場の雰囲気作りや細かい品質チェックは得意分野」と話します。
事例②:設計事務所からゼネコン設計部へ転職
Bさんは設計事務所で住宅設計を担当していましたが、
より大規模な案件に関わりたいという理由でゼネコンの設計部へ転職。
BIM導入プロジェクトにも参加し、プレゼン力とデザインセンスを活かして受注率向上に貢献しています。
「設計は女性だからという理由で制限されない。むしろ多様な視点が求められている」と語ります。
事例③:子育てと現場管理を両立する中堅企業社員
Cさんは2級建築施工管理技士の資格を持ち、地場の中堅建設会社で現場監督として勤務。
育休後は短時間勤務制度を利用し、住宅リフォームや小規模工事を中心に担当しています。
「制度面の整備も大事だけど、現場の理解があってこそ続けられる」と実感しているそうです。
女性のキャリアパス
① 現場経験を積んで管理職へ
- 若手(入社〜5年目):現場での施工管理や設計補助を経験し、業務の全体像を把握
- 中堅(5〜10年目):主任・係長として小規模現場を任され、後輩指導も担当
- 管理職(10年目以降):所長や部長として、複数現場の統括や予算管理を担う
② 専門職としてスキルを極めるルート
- 設計、構造、設備、BIM、DX推進など、特定分野に特化
- 資格取得や研修参加で専門性を高め、技術顧問やエキスパート職としてキャリアを築く
- 高度専門職として転職市場でも評価されやすい
③ 本社管理部門への異動
- 総務、人事、経営企画、技術開発部門など、現場経験を活かせる部署へ
- 育児や介護などライフイベントに合わせて働き方を変えやすい
- 社内制度整備や人材育成に関わり、間接的に現場の働きやすさ向上に貢献
キャリア形成のポイント
- 資格取得(施工管理技士、建築士、設備士など)が昇進・昇給の鍵
- メンターやロールモデルとなる先輩女性の存在がモチベーションを支える
- 働き方の柔軟性と企業文化の理解度が長期的な定着に直結
活躍に必要なスキル
① コミュニケーション力
建設業は多職種・多企業が関わるプロジェクト型の仕事です。
現場監督は職人や設計者、発注者との橋渡し役となるため、
立場や専門知識の違いを理解しながら調整する力が求められます。
特に女性は、細やかな気配りや傾聴姿勢が信頼構築に繋がる場面が多くあります。
② 専門知識と資格
施工や設計に関する基礎知識は必須です。
キャリアアップや昇給には、以下の資格取得が大きな武器となります。
- 建築士(一級・二級)
- 建築施工管理技士(一級・二級)
- 電気工事施工管理技士
- 設備士(建築設備士 など)
③ ITリテラシー
BIM、CAD、現場管理アプリ、ドローン測量など、デジタルツールの活用スキルは必須化しています。
ITリテラシーを高めることで、現場負担の軽減や業務効率化に直結します。
④ 体力・安全管理意識
現場は屋外作業や長時間の立ち仕事もあるため、一定の体力が必要です。
また、安全管理の意識は性別を問わず重要で、
事故ゼロ現場を維持するための知識と判断力が求められます。
⑤ 柔軟な発想力
新しい施工方法や技術、働き方改革の取り組みなど、
変化に対応する柔軟性が活躍の幅を広げます。
女性が働きやすい企業の特徴
① 設備面の整備
- 女性専用トイレや更衣室の設置
- 安全靴や作業服の女性サイズ対応
- 冷暖房や休憩スペースなど、快適に働ける現場環境の確保
設備面の整備は、現場での働きやすさと安全性に直結します。
② 働き方の柔軟性
- 週休2日制や有給取得の推進
- 育休・産休・時短勤務制度の充実
- リモート会議や直行直帰の制度化
こうした柔軟な働き方は、ライフイベントと仕事を両立する上で欠かせません。
③ キャリア支援制度
- 資格取得支援(受験料負担・研修費補助)
- 女性社員向けの研修やキャリア面談
- ロールモデルとなる先輩女性の配置
④ 職場文化と理解
- 性別に関係なく実力で評価される人事制度
- ハラスメント防止の徹底と相談窓口の設置
- 上司や同僚の理解があり、孤立しない職場づくり
まとめ
建設業は、かつて男性中心の職場というイメージが強かった業界ですが、
人手不足や働き方改革、ICT・DXの普及、国の女性活躍推進政策によって、
女性の参入と活躍が着実に進んでいます。
施工管理、設計、営業、技術開発など多様な職種で女性が力を発揮し、
現場や企業に新たな価値をもたらしています。
また、キャリアパスや働き方の選択肢も広がっており、
資格取得や専門スキルの習得によって長期的な活躍が可能です。
今後は、企業側が設備や制度の整備に加え、職場文化や理解をさらに深めることで、
**「性別に関係なく働ける業界」**としての魅力を高めることが、
建設業全体の成長にもつながるでしょう。
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